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住居用物件が学習塾に!

入居者が無断で塾経営

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住居として家を貸したところ、入居者がその借家で学習塾を経営していることがわかりました。契約に違反していることは明らかなので、契約を解除して出ていってもらいたいと考えていますが、可能でしょうか?

学習塾としての使用は用法遵守義務違反

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賃貸借契約は、通常、使用目的を定めて結ばれるものであり、借主は、その目的に従って物件を使用しなければいけません。これは用法遵守義務というものでした(民法616条、594条1項)。
契約書に「借家は住居のために使用すること」と記載されているのに、学習塾として使用している場合には、借主が用法遵守義務に違反していることになります。
では、この用法遵守義務違反を理由として、貸主は、直ちに契約を解除することができるでしょうか。
この場合でも、判例は、貸主・借主間の信頼関係が破壊されたかどうかを問題とします。つまり、借主が用法遵守義務に違反する行為を行った場合でも、お互いの信頼関係が破壊されたといえなければ、契約解除はできないのです。

用法遵守義務違反が争点となった判例

用法遵守義務違反による契約解除が問題となった事例では、契約解除を無効とした判例と有効とした判例があります。
1.契約解除を無効とした判例
この判例では、借主がそれまで活版印刷の工場兼事務所に使っていた建物を、写真印刷の製版のための作業所に変更したことに対し、貸主が契約を解除したことが有効かどうかが争われました。
この点、東京地裁は、写真印刷の製版作業は活版印刷作業よりも静かで清潔な作業であり、貸主に不利益を及ぼさないこと、写真印刷の製版作業に変更したのは借主に止むを得ない事情があったこと、また、原状回復はそれほど困難ではなく建物に重大な影響を及ぼさないなどの理由から、信頼関係破壊に至っていないとして、契約解除を無効としました
(東京地裁の平成3年12月19日判決)。
2.契約解除を有効とした判例
この判例では、会社の事務所に使用するために借りたビルの一室を、借主がテレホンクラブの営業に使用したことを理由とする契約解除が有効かどうかが争われました。
東京地裁は、借主の営業によりビル全体の品位が損なわれ、警察の捜索を受けるなどビル所有者として好ましくない事態が生ずる恐れがあること、契約を結ぶ際に借主がテレホンクラブを営業することを隠しており、それがわかっていれば貸主は物件を貸さなかったこと、また、他の入居者からも苦情が出ていることなどから、信頼関係が破壊されているとして契約解除を有効としました(東京地裁の昭和63年12月5日判決)。
このほかに、契約解除を有効とした判例としては、貸室を暴力団の事務所として使用したことが背信行為であるとして、解除を有効とした判例(東京地裁/平成7年10月11日判決)があります。

使用目的を守らなかったことで信頼関係が破壊されたか

用法遵守義務違反を理由として信頼関係が破壊されたかどうかについて、判例は、
①契約を結ぶまでの経緯
②用法遵守義務違反に関する貸主と借主間の交渉の経緯
③用法遵守義務違反が借家に及ぼす影響の程度
④近隣住民への迷惑の有無・程度
⑤貸主・借主双方の事情
などを総合的に考慮して判断していると考えられます。
質問のケースでも、これらの事情を総合的に考慮したうえで、信頼関係が破壊されたかどうかが判断され、その結果によって契約解除が有効かどうかが決まることになります。
なお、質問のケースと同様の事例として、東京高裁の昭和50年7月24日判決があります。
この判決は、学習塾の生徒数がわずか6名にすぎないこと、借主は塾に使用する6畳間にじゅうたんを敷いて汚さないように配慮したこと、学習塾開設から解除通知までわずか2カ月でその間建物に毀損があったとは認められないこと、さらに借主が、その後学習塾を廃止して建物を住居専用に使用していることなどから、信頼関係の破壊に至っていないとして、契約解除を無効としました。

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