貸借契約書にペットの飼育禁止特約がない場合
特約がない場合、借主がペットを飼育することは原則として認められますが、自由に飼育していいというわけではありません。
借主は、借りた部屋や建物を使うとき、善管注意義務の一環として、その使用法に従って適切に使う義務(用法遵守義務といいます)を負います。借主がペットを飼育することによって、この義務を果たしていないという場合には、用法遵守義務違反として、賃貸借契約を解除できる可能性があるのです。
東京地裁の判決(昭和62年3月2日)でも、ペットの飼育禁止特約がない場合で、貸主に回復し難い損害(建物を汚す、近隣に迷惑をかけるなど)を与えたときは、ペットの種類や数、飼育の状況などを考慮したうえで、なおも、飼育が一般的に許される範囲を超え、当事者間の信頼関係を破壊したと認められる限り、「家畜の飼育は、賃貸借契約における用法違反に当たるというべきである」と判断しています。
ただし、最近はペットブームを背景に、ペット可物件も増加傾向もあり、事情も年々変わってきています。ご相談の際、個々の事情に沿ったアドバイスをさせていただきます。
要点をまとめてみます。
1.迷惑を証明する
ペットの飼育を禁止する特約が賃貸借契約書になくても、借主がペットを飼っていることにより、借家の汚れ、損傷がひどく、近隣の住人にも相当な迷惑をかけているような場合には、貸主は賃貸借契約を解除することができる。
2.契約書に特約条項を
特約があり、借主がペットの飼育の仕方に注意を払っていたとしても、貸主は賃貸借契約を解除することができるとする判例(東京地裁/平成7年7月12日判決)もありますから、特約があるほうが契約の解除は認められやすくなる。