示談で明け渡しを決めた時の注意ポイント
賃貸借契約書の解除の催告後の展開としては、「貸主と借主の示談で明け渡しが決まる」というケースもあります。その場合、貸主が借主に対して、引っ越し代や立ち退き料を支払って、明け渡してもらうということもあります。
家賃を滞納している借主に対して、迷惑をこうむっている貸主がお金を払うなんてとんでもない話だ、と感じる人も多いと思いますが、家賃を払えない借主は、引っ越し代もないほど困窮しているケースが多々あります。裁判費用や逸失利益を勘案すると、その引っ越し代を支払った方が安いということもあるのです。
借主との間で、示談で明け渡しが決まった時は、次の内容を文書にまとめて示談書を作成します。
・明け渡し期日
・敷金、立ち退き料、その他金銭の処理法
・明け渡し後に残された粗大ゴミや所有物
これらと合わせて、明け渡し期日後に、借主が明け渡しを履行しない場合の違約金を設定しておくのが賢明です。その際には、「明け渡し猶予期限の翌日から明け渡し完了日までの間、1日当たり○○○○円の違約金を支払います」といった文を示談書に盛り込んでおくと良いでしょう。
明け渡し猶予期限というのは、示談書で設定した明け渡し日に借主が退去せず、その後、使用し続ける期間を指します。明け渡し日までの期間が明け渡し猶予期限になります。明け渡し猶予期限内は、賃料ではなく損害金が発生します。これらの内容を示談書に盛り込んでおくと、後々、借主がスムーズに明け渡さない場合の対策となるのです。
貸主、借主の間の話し合いで明け渡しを決めた場合のポイントは、金銭に関わることを全て示談書で明確にしておくことです。
・敷金の精算はどのように処理するのか。
・滞納家賃の支払いはどのように処理するのか。
明け渡し時に借主が部屋に粗大ゴミを残した場合、処分費を借主が負担する旨を盛り込むことも必要です。また、借主が私物を残して明け渡しをした場合、「所有権を放棄すること」を明記しておかないと処分することができません。
その他、現状回復費のこと、立ち退き料が発生する場合はそれについても示談書で明確にしておく必要があります。