経過年数グラフの出発点の合意
ここで「経過年数グラフ」についても、説明しておきましょう。
経過年数グラフとは、時間の経過とともに、「修復対象物」の価値がどれくらい減少していくかを示したグラフのことです。
ガイドラインでは、クロスについて、6年で残存価値が10%(6年目以降は一律10%)になるという基準を提示しています。このように、原状回復義務の範囲は、経過年数によって一定の制約を受けます。
そうなると、借主としては、物件内のクロスやカーペットが、交換してから何年くらい経過しているかを知りたがるかもしれません。しかし、現実には、新築物件を除けば、借主が入居した時点でこれらを把握するのは困難でしょう。
経過年数が不明であることから生じる無用のトラブルを防止するためには、各対象物の修理・交換の履歴を残しておくこと、また、借主に対して入居した時点で各対象物の経過年数が何年であったのかを明らかにしておくべきです。
また、ガイドラインは、経過年数が不明である場合には、入居時点での設備等の状況は、必ずしも価値100%のものばかりではないので、その状況に合わせて経過年数のグラフを下方にシフトさせて使用することとしています。
もし、貸主が修理・交換の記録を作成しておらず、対象物の経過年数が不明な場合には、後の争いを避けるために、借主・貸主の間で経過年数グラフの出発点を決めておくとよいでしょう。