契約と異なる用途で使いはじめた!
入居者の勝手な行動としては、「使用目的に違反している」というものもあります。通常の賃貸契約は、予め使用目的を決めて締結しています。借主は、この使用目的を守って物件を使用しなければなりません。これは、法律用語では、「用法遵守義務」と呼ばれます。
具体的なトラブルとしては、使用目的が住居となっているのに、オフィスや教室として使いはじめたというケースなどが考えられます。また、オフィスビルの場合は、使用目的がオフィスとなっているのに勝手に店舗をオープンしたというケースなどが想定されます。
では、これらの使用目的違反に対して、ただちに賃貸借契約が解除できるのでしょうか。
用法遵守義務違反の過去の判例では、契約解除が有効になったことも、無効となった場合もあります。契約解除が有効となるのは、使用目的を違反することで、「建物全体が大きな不利益をこうむった時」や「貸主と借主の信頼関係が破壊された時」に限られるようです。
用法遵守義務違反を理由として、信頼関係が破壊されたかを判断する基準としては、
①契約を結ぶまでの経緯
②貸主と借主の交渉の経緯
③借家に及ぼす影響
④近隣住民への迷惑行為
⑤借主と貸主、両者の事情
などが判例では考慮されています。使用目的違反をしたものの、貸主に大きな不利益をもたらさないこと、現状回復がそれほど困難でないケースでは契約解除が無効となっています。