契約解除が認められたケース
借主が無断で増改築を行い、それにより信頼関係が損なわれ、契約解除は止むを得ないと裁判所が判断したケースとして、他にどんなものがあるでしょうか?
過去の判決を確認してみましょう。
1.信頼関係の破壊が認められたケース
借主が、それまで入口として使用していたドアを閉ざし、別の壁に入口をつくったほか、内装クロスの張り替え、カウンターの取り替え、電気照明などの内装工事を無断で行った事案に対して、信頼関係の破壊が認められています。このケースでは、店舗の基本的な部分に改変が加えられたこと、借主が貸主に改造のための承諾を求める働きかけすらしなかったことなどが考慮されています(大阪地裁/昭和50年9月26日判決)。
2.改装の「範囲」が争われたケース
借主がファッション関係の店舗からアイスクリーム販売店へ業種を変更したのですが、そのことを貸主に隠し、合意した範囲を大幅に超えて改装を行ったという事案です。改装は、窓、天井、床、壁をすべて取り外した大規模なものでした。
借主は、「改装が賃借部分の基本構造に変更を加えるようなものではなく、将来の修復が可能である」と主張していましたが、裁判所は、仮にそうだとしても、借主が業種の変更を隠したまま、従来の業種のままで改装をすると貸主に信じ込ませたこと、また、改装の範囲について文書を作成して合意したのに、これに違反したことを重視して、信頼関係の破壊による契約解除を認めました(東京地裁/平成元年1月27日判決)。