使用目的を守らなかったことで信頼関係が破壊されたか
用法遵守義務違反を理由として信頼関係が破壊されたかどうかについて、判例は、
①契約を結ぶまでの経緯
②用法遵守義務違反に関する貸主と借主間の交渉の経緯
③用法遵守義務違反が借家に及ぼす影響の程度
④近隣住民への迷惑の有無・程度
⑤貸主・借主双方の事情
などを総合的に考慮して判断していると考えられます。
質問のケースでも、これらの事情を総合的に考慮したうえで、信頼関係が破壊されたかどうかが判断され、その結果によって契約解除が有効かどうかが決まることになります。
なお、質問のケースと同様の事例として、東京高裁の昭和50年7月24日判決があります。
この判決は、学習塾の生徒数がわずか6名にすぎないこと、借主は塾に使用する6畳間にじゅうたんを敷いて汚さないように配慮したこと、学習塾開設から解除通知までわずか2カ月でその間建物に毀損があったとは認められないこと、さらに借主が、その後学習塾を廃止して建物を住居専用に使用していることなどから、信頼関係の破壊に至っていないとして、契約解除を無効としました。