借主の基本的な義務「家賃の支払い」
借主が家賃を支払うことはもっとも基本的な義務です。賃貸借契約は、貸主が部屋や建物などを貸し、借主がその対価として賃料を支払う契約であるためです。
この義務が守られず、家賃を支払わないまま借主が居座り続けると、貸主にとっては大きな損害になります。こうした損害が発生しないように、「一度でも賃料の支払いを怠ったときは催告(督促)なしに契約を解除できる」と前もって契約書に定めておくことは、よくあることでしょう。
とはいえ、借主も生活のためや事業のために部屋を借りているはずですから、どうしても家賃が払えなかったという場合に、即刻出て行かなければならないとなると、大変困ったことになります。
そこで判例では、いくら契約書で取り決めがあったとしても、たった一度の家賃の不払いがあっただけでは、契約の解除はできないという扱いがなされています。
では、具体的に何回の不払いがあれば契約を解除できるのでしょうか?
実は、この点について確固とした基準があるわけではありません。
これまでの裁判例を見ても、2カ月間の賃料未払いがある場合に解除が有効とした例(松山地裁/昭和31年9月18日判決)もあれば、7カ月分の賃料未払いがあっても解除が認められなかった例(神戸地裁/昭和30年1月26日判決)もあります。
一般的には、契約の解除が成立するためには、何回かの賃料不払いがあったことが前提となります。解除できるかどうかの決め手となるのは、「当事者間の信頼関係が破壊されているかどうか」にかかってきます。