特約は有効か?
では、質問のように「借主は、故意過失を問わず、建物の毀損・滅失・汚損その他の損害につき損害賠償をしなければならない」という特約がある場合はどうでしょう。
この場合、貸主は「通常生活による損耗」についての修繕費用負担を借主に請求できるのでしょうか。
この点について、最近の裁判例では質問のような特約がある場合でも「ここでいう損害には、賃貸物の通常の使用により生じる損耗は含まれない」と、特約の効力を限定的に解釈したり(名古屋地裁/平成2年10月19日判決)、特約自体の有効性を否定したりしています。つまり、「通常生活による損耗」は、やはり貸主が負担すべきとする傾向にあるのです。
ですから特約があっても、原則として「通常生活による損耗」について借主側が修繕する必要はないと考えられます。したがって、借主が普通に生活をしている限りクロスやカーペットを新品にしての返還請求をすることはできません。